偶然の音楽 (新潮文庫)ポール オースター Paul Auster 柴田 元幸

妻に逃げられ、手元に残された幼い娘は姉夫婦に懐いてしまい余所余所しい
遣り切れなさでいっぱいになっていたジム・ナッシュは
思いがけず高額な遺産が舞い込んだのをキッカケに仕事を辞め、
車でひとり あてのない旅に出た
アメリカ中を走り回ってそろそろ遺産も残り少なくなってきた頃
ヨレヨレになって道を歩いている男と出会う
気まぐれで車に拾ってやったその男ポッツィは博打打ちで …ナッシュは元消防士。嫁さんに逃げられ その後ちょっといい感じになった女性にも去られ、
娘は懐いてくれないし と散々です。全部辞めて旅に出ちゃう気持ちもちょっとわかります。
が お金は使えば無くなるもの、そろそろヤバイかなぁ と思ってたところで
博打の(自称)天才の青年ポッツィを拾います。なんとなく拾っちゃいます。
なんとなく拾っちゃうところが 運命 ですな。
車に乗っけて ポッツィの話を聞いてみるに、
「近々大金持ちの二人組とポーカー勝負をやるのだが今その元手を失くしてしまって困っている」
という。で これまた気まぐれに自分の持ち金全部を使わせる事にするんですな。
お陰でとんでもない事になるんですが。
内容紹介に 「 理不尽な衝撃と虚脱感に満ちた物語 」 とあるように
読後の気分はどんよりとなります。
でも ナッシュとポッツィの不思議な繋がりがイイ感じなんです。
“ 明日には別れて二度と会わないだろう相手 ” と思っていたのがあんな事になって
一緒にいられることに安堵する気持ちまで湧いてきたりして …
プラザホテルでのシーンは堪らんイイです。
トレーラーでの共同生活も危うい精神状態の中でバランスを取っている様がイイです。
女の子を呼んでの大騒ぎでもナッシュは “ ソノ気 ” にならないってのも印象的です。
(ポッツィがいなくなってからはソノ気が湧くってのもまた … )
この作品は映画化されたそうで、それには小説のラストの続きが描かれているんだとか。
小説では結局 彼 はどうなったのか分からないままだし、ナッシュもああなので
どんな続きが創られたのか 観てみたい気がします。
日本では舞台版を仲村トオルさん小栗旬さんをメインに上演されてたんですね。
( 舞台版はストーリーが少々違うのかな? )
ちっちゃな教訓 「 契約書は細部に拘りましょう 」
ポーカー勝負の相手フラワーとストーンのジワリと滲む不気味なオーラが恐いです。